柔らかい光の空間ベス・ショロム・シナゴーグ(フランク・ロイド・ライト)

 

古都フィラデルフィア。

美術館や独立記念館など観光施設には事欠かないが、その中で私が選んだのはベス・ショロム・シナゴーグ(Beth Sholom  Synagogue)。フランク・ロイド・ライト最後の作品の一つであり、現役のシナゴーグである。National Historic Landmarkにも指定されている。シナゴーグとはユダヤ教徒の会堂、Beth Sholomとはヘブライ語で「平和の家」という意味だそうだ。

 

 

 

 

まずはフィラデルフィアの30丁目駅(中央駅)からElkins Parkに向かう。

 

Elkins Parkは住宅街にある小さな駅。

 

さらに駅から歩くこと20分でシナゴーグに到着した。

 

 

この造形はユダヤ教の聖地であるシナイ山をイメージしている。

フランク・ロイド・ライトは、プレイリー・スタイルや幾何学的な美しいデザインの作品が多いと思うが、コレはどうなんだろう? 突起がたくさんあるし色も微妙だし...。折り紙のカブトにしか見えない。この微妙に美しくない(←個人の意見です)屋根の素材は、ワイヤーガラスと波型のプラスチックだろうか?

 

早速中に入る。エントランスにはライトの設計であることを示す赤いタイル!

 

1階は250人収容の礼拝堂、2階に1,000人以上が収容可能な大きな礼拝堂がある。

 

1階は礼拝堂も含めて天井が低く抑えられている。これはライト建築の特徴で、ここからつながる次の部屋をより広くみせるための手法である。とは言え、やや圧迫感はある。

 

その圧迫感を感じる1階から階段を上がると...

 

圧巻!

 

抑えられていたものが一転、圧倒的な光の空間が広がる。半透明の屋根を通して明るすぎないソフトな光で満たされている。

外観から想像していたより広い礼拝堂だ。構造的には周りの基壇から斜めに支柱を立ち上げているので柱もなく、さらに広く感じさせる。

 

飛んでいるようなステンドグラスも素晴らしい。

 

ライトは、平面プランから祭壇、椅子、照明にいたるまで、徹底して三角形をモチーフとしている。足元灯まで!(タリアセン・ライトもあるが)

また所々、ライトの特徴であるマヤ文明からの引用も見られる。

 

デザイン的にも空間的にも、外観と中身は違うということを示す建築であった。人間もそうだよね。

 

なお見学はツアーが原則で、時間が決まっていたり予約が必要な場合もあるので、訪問の際には公式サイトを確認のこと。